【開業時の提出書類一覧】個人事業で開業したら届出が必要な手続まとめ

こんにちは。

長野市の丸山 大介 公認会計士・税理士事務所です。

今回は、個人事業主として開業した際、提出が必要な各種の届出や手続の一覧について解説します。

個人事業を新規開業した方向けの記事です。
(開業2年目の場合は、提出期限が異なる手続がありますのでご注意ください。)

※本記事は、執筆時点の法令等にもとづいて記載しています。手続の適用にあたっては、最新の法令等・手続きをご自身でご確認いただくか、税理士や社労士などの専門家にご相談ください。

個人事業開業時の提出書類・手続きの一覧

一覧をPDFで開く

書類名 必須・任意 届出先 提出期限・留意点
開業届出書 必須 税務署 事業開始の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書 任意 税務署 事業開始の日から2か月以内
青色事業専従者給与に関する届出書 家族従業員の給与を経費にする場合のみ必須 税務署 事業開始の日から2か月以内
給与等支払事務所等の開設届出書 従業員を雇った場合のみ必須 税務署 給与支払事務所を設けた日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 任意 税務署 納期限の定めなし
原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用
所得税の棚卸資産の評価方法の届出書 任意 税務署 事業を開始した年分の確定申告期限まで
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書 任意 税務署 事業を開始した年分の確定申告期限まで
消費税課税事業者選択届出書 任意 税務署 事業を開始した年の12月31日
事業開始等申告書 必須 各都道府県税事務所
(市町村役場)
各都道府県、市町村で定める日
長野県の場合、事業開始から10日以内
長野市で開業した場合、市役所への提出は不要
健康保険任意継続資格取得手続 任意継続する場合のみ必須 所属していた健康保険組合 退職日の翌日から20日以内
国民健康保険加入手続 国民健康保険以外に加入していて任意継続しない場合のみ必須 市町村役場 退職の翌日から14日以内
国民年金保険加入手続 厚生年金に加入していた場合 市町村役場または年金事務所 退職日の翌日から14日以内
労働保険保険関係成立届 従業員を雇う時は必須 労働基準監督署 雇用開始の翌日から10日以内
労働保険概算保険料申告書 従業員を雇う時は必須 以下のいずれか
労働基準監督署
都道府県労働局
金融機関
雇用開始の翌日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届 従業員を雇う時は必須 公共職業安定所(ハローワーク) 雇用開始の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届 従業員を雇う時は必須 公共職業安定所(ハローワーク) 雇用した日の翌月10日まで
許認可 許認可が必要な事業を行う場合 各監督官庁 申請に時間がかかるものもあるので注意



無料で使える開業書類作成サービス「開業freee」

各書類・手続きについて

開業届出書

個人事業を開業したら、開業届出書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

事業開始から1か月以内に提出が必要となります。

国税庁HP 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm

所得税の青色申告承認申請書

青色申告をする場合には、青色申告承認申請書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

事業開始から2か月以内に退出が必要となります。(通常は開業届と同時に提出します。)

青色申告は、日々の取引を所定の帳簿に記載し、それにもとづいて正しい申告を行うことで、税金の面で様々な特典を受けることができます。

  • 所得金額から65万円を差し引くことができる
  • 配偶者等の家族従業員に支払う給与を経費にできる
  • 赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができる

国税庁HP 所得税の青色申告承認申請書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm

青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告を採用する方で、生計を同一にする配偶者や親族(15歳未満を除く)に支払う給与を必要経費にする場合、届出書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

事業開始から2か月以内または、給与を支払うことになった日から2か月以内に提出が必要です。

国税庁HP 青色事業専従者給与に関する届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm

給与等支払事務所等の開設届出書

従業員を雇う場合、届出書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参又は郵送により提出が必要です。

従業員を雇わない場合は不要となりますが、前項の青色専従者給与を支払う際にも提出が必要です。

給与支払事務所の開設から1か月以内に提出が必要です。

国税庁HP 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

源泉所得税の納期の特例を適用する場合、申請書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

提出期限の定めはありませんが、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。

源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限ですが、この申請を行うことにより、年2回(7月と翌年1月)にまとめて納付ができるものです。

給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者(人を雇って給与を払う者など)が適用できます。

国税庁HP 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm

所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

棚卸資産(在庫)の評価方法につき、最終仕入原価法以外の方法を採用したい場合、届出書を作成のうえ、所管の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

対象とする事業年度分の確定申告期限までに提出が必要です。

提出しなかった場合は、最終仕入原価法が採用されたものとみなされます。

最終仕入原価法以外には、下記のような評価方法があります。

・売価還元法(売価から逆算して原価を求める方法)
・個別法(個々の仕入の金額で評価する方法)
・先入先出法(先に仕入れたものから順次払出が行われて売れていくと考える方法)
・総平均法(商品の種類ごとに総仕入原価(期首在庫額+期中仕入高)を棚卸資産の総数(期首在庫数+期中仕入数)で割って単価を計算する方法)
・移動平均法(受け入れの都度、平均単価を計算しなおす方法)
・低価法(上記による評価額と、年末時点での時価のいずれか低い方を評価額とする方法)

関連記事
棚卸資産(在庫)の評価方法とメリット・デメリットをプロが解説

国税庁HP 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/17.htm

所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却資産の減価償却方法につき、法定償却方法以外の方法(定率法)によって計算する場合、届出書を作成のうえ、持参または郵送により提出が必要です。

対象とする事業年度分の確定申告期限までに提出が必要です。

届出を提出しなかった場合は、法定償却(定額法)が採用されたものとみなされます。

減価償却方法は、以下の方法がありますが、いずれも経費として計上される総額は同一になります。

・定額法(毎期決まった金額を必要経費に計上する方法)
・定率法(当初の必要経費計上額は定額法より高いが、年々必要経費に計上される金額が減る方法)

国税庁HP 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/18.htm

消費税課税事業者選択届出書

開業時は消費税免税事業者(消費税を納める必要がない)となりますが、あえて消費税の課税事業者となる場合、届出書を作成のうえ、所轄の税務署へ持参または郵送により提出が必要です。

対象とする事業年度分の確定申告期限までに提出が必要です。

あえて消費税の課税事業者となる場合というのは、開業時に多額の設備投資をした場合や、輸出取引が多いビジネスをしているような場合です。

このような場合、課税事業者になると消費税が還付されることがあるので、あえて消費税の課税事業者を選択するケースがあります。

しかし、過去に不動産投資を使った消費税還付スキームが横行したため、一度消費税の課税事業者を選択した場合、2年間(場合によって3年間)は免税事業者に戻ることができないこととなっています。

したがって、消費税還付を狙って課税事業者になったものの、結果的に納める税金が増えてしまうようなこともあるため、課税事業者の選択には慎重な検討が必要です。

国税庁HP 消費税課税事業者選択届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_01.htm

事業開始等申告書

個人事業を開業した場合、税務署以外にも都道府県税事務所や市町村役場に事業開始申告書を作成のうえ、事務所または事業所所在地の県税事務所に提出する必要があります。

税務署へ提出する開業届出書は、所得税などの国税の納付を宣誓するものに対し、こちらは個人事業税等の地方税の納付を宣誓するものです。

地方税は、住民税(都道府県民税・市区町村民税)と事業税です。

地方自治体によって提出期限は異なりますが、長野県の場合は開業の日から10日以内に提出が必要です。

また、長野市で開業する場合は市役所へ事業開始等申告書の届出は不要です。

長野県HP 個人事業税Q&A
https://www.pref.nagano.lg.jp/zeimu/kurashi/kenze/aramashi/aramashi/qa/kojinjigyo.html#02

関連記事
個人事業税とは

健康保険の任意継続資格取得手続

開業にともない会社を退職した場合、国民健康保険以外の健康保険に加入していたときは、退職の翌日に健康保険の資格を喪失してしまいます。

健康保険の被保険者期間が2か月以上あり、退職の翌日から20日以内に手続をすれば、継続して会社員時代の健康保険を2年間継続することができます。

これを任意継続といいますが、任意継続しない場合は国民健康保険への加入が必要となります。

任意継続するか否かは自由ですが、国民健康保険と比較して保険料が安い場合に任意継続するメリットがあります。

国民健康保険の保険料は、個人の所得の状況や自治体によって異なるため、わからなければ市町村役場に問い合わせしてみるといいでしょう。

任意継続については、加入している健康保険組合などにお問い合わせください。

国民健康保険加入手続

開業にともない会社を退職した場合で、国民健康保険以外の健康保険に加入していたが任意継続しないときには、市町村役場で国民健康保険の加入手続が必要です。

退職の翌日から14日以内に手続が必要です。

長野市HP 国民健康保険 加入・喪失・保険証再発行等の手続き
https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/kokuho/89585.html

国民年金保険加入手続

開業にともない会社を退職した場合で、厚生年金保険に加入していたときは、市町村役場または年金事務所で国民年金保険の加入手続きを行う必要があります。

退職日の翌日から14日以内に手続が必要です。

年金の加入者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3種類に区分されます。

第1号被保険者:自営業者など、国民年金の加入者

第2号被保険者:会社員など、厚生年金の加入者

第3号被保険者:会社員の配偶者など、第2号被保険者に扶養されている配偶者など

厚生年金保険に加入していた会社を退職して個人事業主になると、第2号被保険者から第1号被保険者になります。

日本年金機構HP 転職・退職したときの手続き
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20121003.html

労働保険保険関係成立届

労働保険は、労災保険と雇用保険の総称で、農林水産事業の一部を除き、従業員を1人でも雇う場合、労働保険に加入する必要があります。

従業員を雇用する場合は、保険関係成立届を所轄の労働基準監督署に提出します。

この届出を行うと、労働保険番号がもらえます。

この番号は、概算保険料申告書や雇用保険適用事務所設置届の手続きのときに必要になります。

雇用開始の翌日から10日以内に提出が必要です。

届出用紙は労働基準監督署などにあります。

届出には、事業所の所在を確認できる書類や事業実態を確認できる書類等の添付が必要な場合がありますので、詳細はお近くの労働基準監督署へお問い合わせください。

関連記事
労働局・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)【長野県】の一覧

なお、一元適用事業(二元適用事業以外)と二元適用事業(農林漁業・建設業等)によって手続き若干異なりますので、詳細は厚生労働省HPの労働保険制度案内ページをご覧ください。
(本記事は一元適用事業を前提に記載しています。)

厚生労働省HP 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/040330-2.html

労働保険概算保険料申告書

労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署へ提出した後、当該年度分の労働保険料を概算保険料として申告・納付が必要になります。

保険料は、従業員を雇用した日から12月31日までに支払う賃金の総見込み額に保険料率を乗じて計算します。

労働保険概算保険料申告書は、労働保険保険関係成立届の手続きの後、又は同時に手続きを行います。

雇用開始の翌日から起算して50日以内に手続きが必要です。

届出用紙は、労働基準監督署などにあります。

厚生労働省HP 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/040330-2.html

雇用保険適用事業所設置届

従業員を雇用した際には、雇用保険の適用事業所設置届を公共職業安定所(ハローワーク)へ提出する必要があります。

雇用保険の対象は、正社員だけではなく、パートやアルバイトでも一定要件を満たす場合は雇用保険の加入対象となります。

厚生労働省HP 雇用保険の適用範囲
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html

雇用開始の翌日から10日以内に届出が必要です。

届出の記載には、労働保険番号が必要なため、労働基準監督署にて労働保険保険関係成立届を提出したあとに行います。

届出には、事業所の所在を確認できる書類や事業実態を確認できる書類、労働者の雇用実態を確認できる書類、事業主の住民票等の添付が必要な場合がありますので、詳細はお近くのハローワークへお問い合わせください。

関連記事
労働局・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)【長野県】の一覧

厚生労働省のパンフレットに記載例がありますので、ご参照ください。

厚生労働省HP 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/040330-2.html

雇用保険被保険者資格取得届

従業員を雇用したときは、従業員の情報を記載した雇用保険被保険者資格届出書をハローワークへ提出する必要があります。

雇用した人数分だけ提出が必要です。

従業員のマイナンバーや、雇用保険に以前加入していた方を採用した場合は、雇用保険被保険者番号などの記載が必要ですので、あらかじめ確認しておきます。

厚生労働省のパンフレットに記載例がありますので、ご参照ください。

厚生労働省HP 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/040330-2.html

関連記事
労働局・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)【長野県】の一覧

各種許認可

開業する業種によっては、許認可の申請義務があります。

例えば、理・美容業の開設届や、飲食業の飲食店営業許可、リサイクル品を扱う際の古物商許可証などです。

関連記事
主な許認可の種類とその届出先の一覧まとめ

諸官庁所在地等

関連記事
税務署(長野県)の一覧
県税事務所(長野県)の一覧
労働局・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)【長野県】の一覧
年金事務所(長野県)の一覧



無料で使える開業書類作成サービス「開業freee」

おすすめの記事