金融機関は決算書のココを見る!融資に強い決算書はこれだ!

融資を受けたいと思っているけど、金融機関は決算書のどこをみているの?

融資に強い決算書ってあるの?

そんな疑問にお答えします。

本記事を読むことで、金融機関が決算書のどこを見て、何を重視しているのかがわかるようになります

こんにちは。

長野市の公認会計士・税理士の丸山 大介です。

私は、複数の金融機関の会計監査を5年間実施してきました。

金融機関は、融資先の決算書などの情報にもとづき、優良な債務者であるか、問題のある債務者であるかを評価しています。

この評価の結果を「債務者区分」といいます。

会計監査では、金融機関が行った債務者区分が適正に行われているかどうかのチェックを行っていました。

当然ながら、金融機関が問題のある債務者と判断した場合、融資は厳しいものとなってしまいます。

したがって、金融機関から融資を受ける際の参考として、金融機関が決算書のどこを見て、何を重視しているのかを解説したいと思います。

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債務者の区分について

金融機関は、債務者を以下のように区分しています。

正常先 とくに問題がない債務者
要注意先 業績や財務に少し問題がある債務者
要管理先 3か月以上の延滞があったり、弁済について特別有利な措置を受けているような債務者
破綻懸念先 経営破綻しそうな債務者
実質破綻先 実質的に経営破綻している債務者
破綻先 経営破綻の事実がある債務者

区分が下に行くほど、金融機関の融資に対するスタンスは厳しくなります。

例えば、要管理先以下の水準では、通常新規の融資を行うことはありません。

というのも、要管理先以下の債務者に対する融資は、金融機関において「不良債権」という位置付けになるからです。

不良債権を抱えている先に融資をしたくないというのは当然のことです。

それでは、それぞれの区分についてもう少し詳しくみてみましょう。

正常先とは

業績が良く、財務の状態についても問題がない債務者です。

要注意先とは

たとえば、以下のような状態にあるなど、業績や財務の状態に問題がある債務者のことで、今後の管理に注意が必要な債務者です。

・金利を減額されたり免除されている
・3か月未満の延滞がある
・債務超過にある
・直近3期以内に赤字がある
・弁済を先延ばしにしている

要管理先とは

要管理先は、3か月以上の延滞があったり、貸出条件緩和債権に該当する融資を受けている債務者です。

貸出条件緩和債権は、融資したお金の回収をすることなどを目的に、経済的に困難な状況にある債務者に対して、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他のお金を借りた人に有利となる取り決めを行った融資のことです。

破綻懸念先とは

現状では、経営破綻の状態にはないけれども、経営難の状態であって、経営改善計画等の進捗が悪く、今後、経営破綻に陥る可能性の高い債務者です。

たとえば、事業を継続しているものの、実質債務超過の状態に陥っていて、業績が著しく低調で、しかも返済が延滞状態にあるような場合などです。

元本や利息の最終回収について重大な懸念がある債務者といえます。

破綻懸念先は、略して「ハケ」と呼んだりします。

実質破綻先とは

法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状況にあり、再建の見通しがない状況にある債務者です。

具体的には、以下のすべての状況にあてはまるような債務者をいいます。

・事業を形だけ継続している
・多額の不良債権を抱えていたり、返済能力に比べて多額の借金があったりすることで、実質的に大幅な債務超過の状況にある
・債務超過が相当期間続いている
・業績好転の見通しがない
・元本および利息について、実質的に長期間延滞している

実質破綻先は、略して「ジッパ」と呼んだりします。

破綻先とは

法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者です。

たとえば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等によって経営破綻している債務者をいいます。

決算書チェックのポイント

金融機関が、債務者区分を決めるうえで、主となるチェックのポイントは以下のとおりになります。

赤字はないか? 直近3期以内に赤字がないか
債務超過ではないか? 債務超過になっていないか、債務超過の解消まで何年かかるか
償還能力に問題はないか? 借入等の返済までに、何年かかるか
返済に問題は生じていないか? 延滞や、金利の減額、免除など、返済に問題が生じていないか

チェックポイントすべてに「ノー」と回答できれば、金融機関の評価はかなり高くなります。

債務者区分は、決算書などの定量的な情報のみならず、経営者の資質など、定性的な情報も考慮した上で総合的に判断します。

しかし、決算書などの定量的な情報が評価に与える影響はかなり高い傾向にあります。

赤字はないか

営業損失、経常損失、当期損失のいずれかについて、直近3期のうちに赤字がないかどうかをみます。

なぜ3期なのかというと、金融機関では、3期程度の決算書を並べて評価をするのが通常だからです。

事業を始めて3期に満たない場合は、開業から直近年度分で評価します。

3期連続で黒字の場合、金融機関からの評価は高くなります。

金融機関は直近3期以内に赤字がある場合、要注意先以下の目線で債務者区分を実施します。

ただし、直近3期以内に赤字があったとしても、以下のような場合には問題ないものとして扱うことが許されています。

  • 創業赤字で当初事業計画と大幅なかい離がない場合
    →具体的には、黒字化が5年以内で、かつ、売上と当期利益が事業計画比で概ね7割以上確保されている場合
  • 一過性の赤字の場合
    →固定資産の売却などによって損失が発生し、短期間に黒字化が見込まれるとき
  • 中小・零細企業で、返済能力に特に問題がないとみとめられるとき
    →代表者へあきらかに高い報酬を支払うことによって赤字となっている場合や、代表者個人に預金や不動産などの資産が多額にある場合など
  • 自己資金が十分にあるなど、明らかに返済能力に問題がない場合
    →例えば、1千万円の借入に対し、5千万円の預金がある場合などは、すぐにでも借入を一括弁済できるので問題としません

債務超過はないか

債務超過
負債が資産を上回る状態のこと

債務超過については、実質的な債務超過になっていないかという点が重要です。

金融機関は、融資先から入手した決算書を見て、そのまま優劣を評価するわけではありません。

決算書に反映されていない含み損などを識別して修正することで、正確な収支や財務内容を把握するようにしています。

これを実態修正といいますが、実態修正後に実質的な債務超過となっていないかを判断しているのです。

なぜ実態修正を行う必要があるのかというと、中小企業では本来あるべき会計処理が実施されていないことがあったり、代表者の財産の状況を加味して評価する必要があったりするからです。

決算書の目的は、大きくわけると、以下のようなものがあります。

・税金を計算すること
・金融機関など債権者や株主などへ情報提供し、融資などの投資意思決定を可能とさせること
・企業内部での業績管理をすること

中小企業においては、税金の計算を目的とした決算書が作成されがちです。

税金計算だけを視野に入れると、税金の計算に必要な所得(利益)の部分に着目されるため、資産価値の無いものが資産として計上されているかどうかについてまで深く検討せずに決算書を作成するケースがでてきます。(顧問税理士の力量にもよるのでしょうが、、、)

したがって、実態修正をして資産性のない資産などを除外し、実質的な債務超過になっていないかを判断する必要がでてくるのです。

話をもとに戻しますが、債務超過がある場合であっても、ただちに金融機関から悪い評価を受けるかというと、そういうわけでもありません。

債務超過がある場合は、債務超過の解消までにがどれくらいの期間が必要かというところがポイントになります。

債務超過解消期間
債務超過が解消するまでの期間。

債務超過解消期間=実質債務超過額÷経常的な利益(直近または平均値を使う)

たとえば、債務超過が短期に解消する見込みの場合と、長期解消する見込みがない場合では、債務者の評価が異なってきます。

短期に債務超過が解消する場合の方が評価が良いため、債務超過を早期に解消するように努力する必要があります。

償還能力はあるか

償還能力は、債務償還年数が何年かという視点で評価します。

誤解を恐れずに言うと、貸したお金が何年で返ってくるのかということです。

債務償還年数が短いほど、償還能力があるものとして、金融機関の評価は高くなります。

製造業のような一般的な事業会社の場合については、例えば以下のような判定が行われます。

債務償還年数 債務者区分
~10年 正常先(問題なし)
10年~20年 要注意先(償還能力が低い)
20年超 破綻懸念先(極めて償還能力が低い)

なお、不動産賃貸業や、倉庫業、旅館ホテル業などは30年程度を目安に要注意先以下の水準とするなど、業種によって設定される年数は異なります。

また、不動産賃貸業、倉庫業、旅館ホテル業など設備依存型の業種においては、主要設備の経済的耐用年数(使用可能期間)と比較することもあります。

これは、収益の源泉が設備に依存するため、債務償還年数が使用可能期間より長い場合、注意を要するということです。

債務償還年数
要償還債務が、キャッシュフローにより何年で返済可能かを示すもの
債務償還年数=要償還債務÷キャッシュフロー(直近または平均)
要償還債務
要債務債務=借入金などの有利子負債ー正常運転資金―現預金(余剰分)ー売却可能資産の処分見込額
キャッシュフロー
お金の動きのこと。
債務償還年数を計算するキャッシュフローは、簡易キャッシュフローを使う。
簡易キャッシュフロー=当期損益+減価償却費等の非資金項目
正常運転資金
営業活動を行う上で、経常的に必要な資金のこと
正常運転資金=売上債権+棚卸資産―仕入債務
減価償却費
購入した設備などの価値の目減り分を、使用可能な期間にわたって規則的・計画的に費用として計上したもの。
設備の購入時に支出があるものの、減価償却費自体はお金が出ていかない費用のため、非資金費用の代表例。

要償還債務は、借入金などの有利子負債から、正常運転資金と現預金(余剰分)、売却可能な資産の処分見込額を差し引いたものです。

有利子負債から正常運転資金を差し引いているのは、運転資金に対応する借入金は、売上代金の入金などにより短期的な返済が想定されるためです。

なお、ここでいうキャッシュフローは、簡易キャッシュフロ―のことで、キャッシュフロー計算書を作成していない中小企業等においては、簡易キャッシュフローで債務償還年数を計算することになります。

返済に問題は生じていないか

元金の返済や利息の支払い状況に問題が生じている場合、要注意先以下の目線で評価されます。

たとえば、以下のようなケースが該当します。

・金利を引き下げてもらっている
・金利の支払いを猶予されている
・元本の支払いを猶予してもらっている

元金や利息の返済が約定指定日の翌日を起点として、3か月以上延滞している場合や、上記のようなケースに該当し、基準金利を満たさない場合は、要管理先以下の評価となります。

こうなってくると新規の融資は確実に厳しくなりますので、返済が厳しくなる前に、公認会計士や税理士、メインバンクへ相談することをお勧めします。

まとめ

最後にあらためて、金融機関からの融資に強い決算書のポイントをまとめます。

  • 直近3期以内に赤字がないこと
  • 債務超過になっていないこと
  • 債務償還年数が10年以内であること

以上、「金融機関は決算書のココを見る!融資に強い決算書はこれだ!」でした。

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